選手の体から湯気が立ちのぼる時、サイドラインにはヴィンス・ロンバルディの魂が漂います。 真冬の湿った芝には、幾多の選手たちの汗と涙が沁み込んでいます。 古ぼけたベンチシートに腰掛ければ、田舎の強豪チームを愛した父や祖父の思い出がよみがえってきます。 古き良きものを愛するひとびとの気持ちの結晶が、このランボーフィールドなのです。

沿革

1925年にカーリー・ランボーの母校Green Bay East高校の隣に建設されたCity Stadiamは、30年にわたってパッカーズのホームスタジアムとして親しまれました。しかし1950年代になると老朽化し、NFLの中では収容人員(25,000人以下)も物足りません。他のNFLチームから不満が出始めたこともあり、1955年にパッカーズはグリーンベイ市に新スタジアム建設の要望を伝えます。建設資金は市債でまかなうことになりましたが、それには市民の承認が必要。さいわい1956年の住民投票では圧倒的多数で可決され、グリーンベイ市の南西側の農地を買い上げて新スタジアムが建設されることになりました。

大都市と比べて安いコスト、しかもグリーンベイ市が水道・下水道・駐車場の工事を行い、ブラウン郡も格安で協力したこともあり、建設コストは$96万ドルで済みました。当初のキャパシティは32,150人。掘り下げ式のため、フィールドレベルが外部の地面より低くなっているのがランボーフィールドの特徴です。右下の写真からも分かる通り、最初は南北エンドゾーン裏には大型スタンドがありませんでした。しかし、最初から増設をしやすい作りにしてあったため、その後も数回にわたって客席が増設されていくことになります。 

建設中のランボーフィールド 記念すべきこけら落しのベアーズ戦 最初の試合を上空から

スタジアムが完成したのは1957年シーズンの開幕直前。9月29日の記念式典には当時のニクソン副大統領らも出席しました。32,132人の観客の前で行われたシカゴ・ベアーズ戦は21-17でパッカーズが逆転勝ちし、こけら落としを勝利で飾りました。

このスタジアムは、完成してから8年間は New City Stadiam と呼ばれていました。しかし1965年、チームの創立者でもあり初代ヘッドコーチでもあるカーリー・ランボーの死去にともなって、球場の名前は Lambeau Field と改名され、現在にいたっています。

完成当時のキャパシティは32,500人でしたが、1961年、63年、65年、70年、85年、90年、95年の7回にわたって(ボックス席を含めた)シートの増設が行われ、 2001年には60,890人となりました。またフィールドの下には延べ30マイルものヒートパイプが埋め込まれ、芝の根の部分を華氏70度(摂氏21度)に保つことによって冬の間も芝を生育させることができるようになっています。ヒートパイプの仕組みは(97年に一新されたものの)ヴィンス・ロンバルディHCによって採用されたものです。

旧ランボーフィールド

Lambeau Field Renovation

1957年に建設されたランボーフィールドは、40年以上にわたってグリーンベイの象徴として親しまれてきました。その古ぼけた雰囲気を愛するファンは多かったものの、ラグジュアリー・ボックス席などの収入が少なければ、現代のNFLでは競争力を保っていくことができません。そこで、ランボーフィールドを「子供や孫に守り伝えるため」非常に大幅な改装を行うことになりました。

全て壊して全く新しいスタジアムを作らない理由は、「ランボーフィールドは素晴らしい歴史を持つ特別な場所であり、それを守るためである」と説明されています。それにまた、新球場を作ってしまうと、新しい建築規制による制限で、フィールドとスタンドの距離が離れてしまうのだとか。寒冷地であってもドーム球場にしないのはもちろん「フットボールは外でやるのだ」という伝統、そして厳しい環境がホームチームにとって有利であるということが理由です。

幾多の名選手がプレーした、フィールドレベルは全くそのままで、スタンドも一般席の部分はほとんど変わらず、狭いベンチシートのまま。それ以外の、外側の建物の部分がすっかりと建て替わることになりました。

総工費は$295ミリオン。そのためにブラウン郡に0.5%の売上税を課すことが2000年秋の住民投票で、からくも可決されました(ハーラン元社長の回顧談へ)。シーズンチケットホルダーたちも、$600ドルから$1400ドルもの出費を求められました。その他にもNFLからの借り入れなどで、建設費用がまかなわれました。2001年の着工から2003年の完成まで、パッカーズは他のスタジアムを借りることなく、建設を少しずつ続けながら、全てのホームゲームをランボーフィールドで行うことができました。

新ランボーフィールドのキャパシティは、1万人以上増えて72,515人に。「パッカーズ・ホールオブフェイム」や球団直営のPackersProShopもスタジアム内に移設され、大幅に拡充されました。ゲームデイ以外にも営業しているレストランやバーを含め、1年を通じてファンのグリーンベイ詣でを受け入れることができるようになり、より魅力的な観光スポットとなりました。このことが、球団の経営にも地元経済にも大きな貢献をしているのは言うまでもありません。

なお、2000年秋の住民投票では、「地元ブラウン郡住民の税負担を減らすため、スタジアムの命名権を企業に売却する」ということも承認されたのですが、その後の景気の落ち込みもあって、いまだに売却先が見つかる気配はありません。球団の収入そのものは順調に伸びてきているため、命名権売却は事実上棚上げになっているようです。

新ランボーフィールド

Lambeau Field Trivia